任期満了に伴う御浜町長選(9月22日〈火・祝〉告示、27日〈日〉投開票)が近づいている。町長選は次の4年を託すだけでなく、これまでの町政運営を検証する場でもある。だが、今の御浜町政からは、その緊張感が十分に伝わってこない。
現職は今期限りでの引退の意向を明らかにしている。正式に立候補を表明しているのは、前副町長の新人のみで、先日の立候補予定者説明会にはこのほかに若手議員1人が出席したが、報道陣の取材に「将来を見据えてのもの。混乱を招くだけの無投票阻止はしない」との考えを示した。3月議会以来、消防車庫建設断念による損失や津波避難タワー用地買収費の計上をめぐり、町長の政治姿勢が厳しく問われた。当初予算の否決、さらには百条委員会の設置などで急先鋒に立った議長に町長選への出馬が取りざたされたが、本紙の取材に「議会としても大きな役割を果たしていかなければならない中で、出馬の可能性は極めて低い」と述べた。議会では激しい議論を交わしたが、その信を問う機会とみられていた町長選が無風となれば、町民の町政への関心はますます低くなるだろう。仮に今回無投票なら3回連続。町議選も2回連続無投票のため、町民が最も身近な選挙で投票できたのは2017(平成29)年11月の町議選にまでさかのぼる。町政に関して9年間も意思表示できないのは〝異常事態〟と言えるだろう。
町は第6次総合計画の後期基本計画を掲げ、2026(令和8)年度から30(令和12)年度までの施策の方向を示している。総合計画は町政の最上位計画であり、本来は将来像だけでなく、優先順位と実行責任を町民に明らかにする役割を持つ。にもかかわらず、計画をどう現実の課題に結び付け、限られた財源の中で何を優先するのかという説明は、なお十分とは言い難い。計画を示しただけで責任を果たしたことにはならない。行政に求められるのは、成果と不十分さの両方を率直に示す姿勢である。
無投票そのものを否定するつもりはない。だが、論戦が乏しく、実績の検証もあいまいなまま首長選が終わる状態が続けば、行政の緊張感は確実に薄れる。今回の町長選で問われるべきは、候補者の公約だけではない。新町長がこれまでのように都合の悪い論点から目をそらさず、真正面から説明する覚悟を持っているかどうかだ。
御浜町政はいま、沈黙やあいまいさで乗り切れる局面にはない。計画の達成度、事業の妥当性、判断の根拠、そして失策があればその責任まで、町民に分かる言葉で示すべきではないか。行政の説明不足と緊張感の欠如を放置したままでは、町の未来は明るくない。町長選の構図ははっきりしないものの、どのような結果になろうとも、町政の側こそ、まず襟を正さねばならない。
