港まつりの海上花火大会の打ち上げの2時間ほど前、三脚と折りたたみイスをかついで、天満浦の山に走る。撮影場所を確保し、木陰に隠れ、景色を見つつ、本を読みながら待つ。暗くなって本が読めなくなると、いよいよ打ち上げも近い。大してページも進まなかったが、それも良い。普段は行列に並んだり、手持ち無沙汰な時間を待つのは好きではないが、尾鷲の海とまちを一望できる年に一度のこの時間は、むしろ楽しみにしている。
近年の花火大会はどう盛り上げるか、どれだけ人を呼び込めるか、という命題からどのように維持していくかにフェーズが変化している。当たり前だった夏の風物詩がなくなる、そんな現実はあり得る。
尾鷲市出身の作家、伊吹有喜さんの小説『灯りの島』は戦中戦後の苦しみを乗り越え、復興をけん引する火力発電所を造る物語。今の尾鷲は人口が減り続け、その灯りの島である三田火力発電所を失い、廃業や撤退も続く。
苦しいが、だからこそ、港まつりという灯りまで失うわけにはいかない。
(R)
