22日午後8時30分ごろ、御浜町下市木の国道42号で、大型夜行バスが道路脇の防風林に突っ込む交通事故が発生した。紀宝署によると、この事故で運転手1人が死亡、乗客の男女21人が病院に搬送された。乗客の中には骨折した人も複数いるが、いずれも命に別条はないという。交代要員の男性運転手にけがはなかった。また、現場にはブレーキ痕がなかったことが分かっており、同署はバスがスピードを落とすことなく衝突したと見て詳しい事故原因を調べている。
現場は片側1車線の直線道路で、向地口交差点からやや熊野市方面に進んだところ。バスは対向車線を斜めに横切って道路脇(海側)の防風林に衝突し、前部が大破した。運転していた埼玉県川越市の会社員、橋爪悟司さん(57)は意識不明の状態で病院に搬送されたが、同日午後10時39分に死亡が確認された。
バスは那智勝浦町から東京・埼玉方面に向かう夜行バスで、この日は西武観光バス(埼玉県所沢市)が運行していた。同社はホームページなどを通じて、「けがをされたお客さまには心からおわびを申し上げますとともに、バスにご乗車のお客さまさや近隣にお住まいの皆さま、関係者の皆さまにも多大なるご心配とご迷惑をおかけしましたことを、深くおわび申し上げます。今回の事故を厳粛に受け止め、二度とこのような事故を発生させることのないよう、今後の調査結果を踏まえたより一層の安全対策を徹底し、再発防止に向けて全力で取り組んでまいります」などとコメントした。
事故発生後、同署は向地口交差点から三軒屋交差点の上下線で通行止め(う回路あり)としていたが、23日午前0時55分に規制を解除した。
なお、バス運行会社によると、同路線は現在、通常通り運行している。
負傷者は3病院に
熊野消防 現場でトリアージ
大型バスによる交通事故発生の通報を受け、熊野市消防署は多数の負傷者がいることを想定し、非番の署員を招集させる緊急体制を敷いて対応した。現場に駆け付けた署員は現場近くのガソリンスタンド敷地内に負傷者を集めてトリアージ(負傷者の状態を迅速に評価し、治療の優先順位を決定する手法)。14人を近くの紀南病院(御浜町阿田和)に搬送し、新宮市立医療センター(新宮市蜂伏)と尾鷲総合病院(尾鷲市上野町)にも4人ずつの計22人を搬送した。
熊野消防では、本署に2台、御浜・紀宝・紀和の各分署に各1台の計5台の救急車を所有しているが、この事故への対応で本署の1台のみを残して4台出動させた。軽傷とみられる9人の搬送には同消防のワンボックス車を使用した。熊野消防は本紙の取材に、「負傷者の受け入れに3つの病院が応じてくれたのでスムーズに搬送することができた。また、本署に救急車1台は残していたものの、同時刻に他の救急事案がなかったことは幸いだった」と話した。
紀南病院も緊急対応
14人の負傷者を受け入れた紀南病院は、救急当直の医師と看護師各2人に加え、入院患者対応の医師と看護師や、報道を見て駆けつけた看護師らが対応にあたった。また、搬送した熊野消防の署員も各負傷者の診察の順番が来るまで間、容態の観察などで応援した。同病院は「多くの負傷者の受け入れで、通常の救急当直だけでは人員が足りなかったところだったが、応援を得て対応することができた」と話した。
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