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熊野三部作、継承へ弾み 世界遺産20周年記念の落語会

会場満員の大盛況
 
 世界遺産登録20周年記念「西国第一番札所落語会ー熊野三部作披露ー」が23日、那智勝浦町の那智山青岸渡寺「信徒会館」であり、熊野をモチーフにした「熊野詣」「三枚起請」「宗珉の那智の滝」の落語三席が披露された。

 熊野「落語を愛する会」(熊野家三九郎代表)主催。上方落語には旅道中を題材にしたネタは多くあるが、熊野詣に関するネタはほとんどなかった。桂米朝師匠と五代目桂文枝師匠によると、熊野詣は命がけの旅だったため、笑いにつなげられなかったのではという。「紀伊山地の霊場と参詣道」の20年前の世界遺産登録を機に、五代目桂文枝師匠が病魔に侵されながらも何度も熊野を訪れ、2年半かけて「熊野詣」を創作。当時、制作活動に同行していた熊野家三九郎さんが発起人となり、今年20周年の節目にあわせて、熊野の持つ信仰の聖地としての特異性を改めて広く知ってもらうことを目的に落語会を計画した。

 この日は会場満員となる300人以上が来場。冒頭、芸能史研究家で皇学館大学講師の前田憲司さんが熊野三部作について解説した。熊野三部作は、熊野の「八咫烏」「護符」「滝」をそれぞれテーマにした作品で、「熊野詣」を桂枝曾丸さん、「三枚起請」を桂坊枝さん、「宗珉の那智の滝」を熊野家三九郎さんがそれぞれ演じた。

 「熊野詣」はカラスを大変かわいがった女房の死後、その魂を弔うために京都から熊野に詣でる親子二人連れの道中記で、庶民の熊野詣といえる。「三枚起請」は上方・江戸両方に残る熊野に関連する唯一の古典落語で、熊野信仰伝播の一つのツールだった熊野牛玉宝印を身請け証文として利用した遊女の噺(はなし)。

 「宗珉の那智の滝」は江戸落語の大ネタとして継承されている噺で、「宗珉の滝」という演目が本来だが、この滝が那智の滝を指しているのが明らかなことから改題した。師匠から勘当された腰元彫りの彫師が、那智の権現様に導かれ21日間の滝修行に耐えることで、眠れる才能が開眼するという、聖地熊野の神髄が盛り込まれ、なおかつ熊野を舞台にした唯一の噺で、熊野にとっては大変貴重な古典落語。

 3人の噺家は巧みな語り口調で熊野を表現。来場者は“熊野の世界”に引き込まれ、時に笑い、最後は大きな拍手を送った。

 冒頭にあいさつした、青岸渡寺の木亮英住職は、五代目桂文枝師匠が創作活動のため那智山を訪れたことを振り返り、「師匠も天国で今回の落語会を眺めていると思う。天国の師匠に聞こえるように、大いに笑って楽しんでほしい」とあいさつした。

 終了後、熊野家三九郎さんは「大勢の皆さんにご来場いただきありがたい。三部作の継承が今後の熊野の魅力発信に大いに役立つということを広く訴えることができたと思う」と話した。

      11月25日の記事

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