9月も半ばに差し掛かったが、日中の日差しは夏そのもので、山は青々としている。目には秋が見えないが、それでも朝夕の風には微かに秋が感じられる。
尾鷲に春を呼ぶのがヤーヤ祭りであるなら、八幡祭りは秋の始まりを告げる祭りだろう。ここから引本神社の関船祭のほか、三木里や三木浦の秋の祭礼、二郷神社や赤羽神社の例大祭と、秋の祭りが続く。
収穫に感謝する秋の祭りは明るい雰囲気のものが多い。秋の祭りは働いて収穫したものをいただくという人の営みに根ざし、幸福を分かち合って生きていく生存戦略の正しさの証明でもある。津々浦々で行われてきた祭りは、近似の中に相違がある、日本の文化の豊かさにつながっている。
地方の祭りや催しは、過疎化にコロナ禍で縮小を余儀なくされたり、続けられなくなったところも多い。科学技術が発展したとしても、生物として自然の恵みを享受する根源的な営みに根ざした多様な文化が消えてよいはずがない。今年も行われていく祭りの貴重さをかみしめる季節となる。
(R)