宇宙シンポジウムin串本で、JAXA理事で基幹ロケット「H3」のプロジェクトマネージャーを務めた岡田匡史さんが基調講演を行った。H3開発がいかに高い壁であったか、本当に完成するのかという不安や恐怖、やっと完成したと思ったら試験機1号機の打ち上げという挫折を経験したことなど、挑戦を繰り返してきた人の生きた言葉には重みがあった。
「誰のためにやっているかをいつも考える」と話していたのが印象に残っている。岡田さんの表情が、これまでにいくつもの挫折を繰り返し、いくつもの心無い言葉にさらされてきたのであろうことを物語っていた。1号機失敗の際には「宇宙計画を台無しにした」「衛星を失った」「これからの自分のキャリアが絶たれる」などの思いで現場はモチベーションが下がっていたと岡田さん。しかし徐々に全員が前を向けたのは、「立ち止まれば日本の宇宙の未来はない」との思いからだったという。「皆さんと一緒にやっている」。
夢が叶うかは神のみぞ知るが、信念を貫くかは自分が決められる。怠惰な自分という重力を突破できるか。青天を仰ぐ。
【稜】