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社説「打ち上げ延期 地元機運の維持を」

 日本初の民間ロケット打ち上げ場として整備された串本町田原の「スペースポート紀伊」で今年夏ごろに予定されていた初号機の打ち上げについて、運営会社の「スペースワン」(東京)は先日、打ち上げを延期することを発表した。延期は4回目で、初号機の打ち上げ時期は現段階で未定。

 同社の広報担当者は、延期の理由に、部品調達に時間がかかっていることに加え、それによって試験などが遅れていること、国内宇宙産業の相次ぐ失敗事例も踏まえ慎重を期さなければならない状況にあることなどを挙げた。
 
 地元はロケット打ち上げに伴う観光や経済面への波及効果を期待し、さまざまな準備を重ねているだけに、4回目の延期発表に落胆の声が大きい。一方で、運営会社のプレッシャーも相当なものだと推察できる。岸本周平知事は、確実な成功に向けて見守っていく方針を示し、串本町と那智勝浦町の両町長も同様の姿勢を見せた。
 
 打ち上げについては2か月ほど前には発表するとしており、時期が定まった段階でいち早く地元住民らにも伝わるよう、運営会社は県や両市町と緊密に連携を取りながら進めてもらいたい。
 
 延期続きで地元の機運が下がらないような工夫も必要になる。これまで同様に関連イベントの開催が機運を高める手段の一つだが、シンポジウムや講演会による専門的な話題ばかりではなく、親子連れにもターゲットを広げたものも取り入れ、気軽にロケットに触れる雰囲気を作ってもらいたい。
 
 例えば、那智勝浦町側の見学場として活用される旧浦神小学校屋上での野外イベントの開催。地元住民に向けての見学会は開いたが、延期となっているこの期間を利用し、町内外にPRしてはどうか。見学場を訪れることにより、ロケット発射のイメージが湧きやすく、子どもたちの興味・関心も誘いやすい。これから秋から冬にかけては空気が澄み、星空がきれいに見えることから、周囲に光の少ない同所は観察会に最適なロケーションとなる。また、地元高校の吹奏楽部に呼び掛けて野外音楽祭を開催すれば活気づくだろう。打ち上げ延期を悲観的に考えるのではなく、熱を冷まさない取り組みを継続することが大切になる。
 

      9月 1日の記事

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