山でウサギを追ったことも、川でコブナを釣ったこともないが、唱歌『ふるさと』を聞くとじんと来る。非科学的な話は好みではないが、豊かな自然や牧歌的な田園風景は日本人の心の奥底に刻み込まれているのでは、と思うこともある。
いわゆるZ世代の若者の間で昭和レトロブームが流行している。生まれる前に当たり前にあったものに郷愁を感じるのは、現在につながる相違点を感じ取り、なじみのある異世界のような感覚に陥るからだろうか。尾鷲高のまちいくで長島の魚まちを訪れた高校生の感触は決して悪くないように感じた。「新しいものをつくるのではなく、この景観を楽しんでもらえる取り組みをつくれれば」という言葉は心強い。
名古屋や大阪からは距離は確かにあるが、尾鷲市や紀北町は高速道路もJRもあり、アクセスは決して悪くない。東京などの都市部で生まれ育った人々が増える中、その人たちの心にある「ふるさと」を刺激するようなビジネスプランを確立できないか。
(R)