自分たちが住む地域の高校の将来について、多くの人に考えてほしい。少子化の進行により県立高校の再編整備を目指している和歌山県教育委員会が今年3月、新宮高校と新翔高校の将来的な統合を示唆した指針を公表したことを受け、両校の校長が「地域と一緒になって魅力ある学校をつくっていきたい」として、地域住民から広く意見を公募することを発表した。
県教委は昨年度、県内各地で再編整備に関する説明会を開き、参加者からの意見も聴取した。こうした意見も反映して指針を策定したが、学校と地域のつながりを重視し、できる限り地域の声を聞いた上で、計画策定していく姿勢を示している。
指針では統合の時期は未定だが、両校は意見を募る上で現在の小学6年生が高校に進学する令和8年4月をめどに、新たな高校としてスタートすると仮定し、新たな学校の姿を「一人一人のやる気と可能性に応える高校教育を目指す」を柱とする。
地域にとって学校はコミュニティーのひとつで、将来、地域を担う人材を地域で育てることが理想。そのためには地域の実情を踏まえた学校の風土や指導計画が必要になる。全体的な骨子は県教委が決めるものの、その中身については地域の声を踏まえたうえで両校が中心となって決めていくという形にしたのはよいことではないか。
生徒数の減少を考えれば「統合やむなし」という考えが大半だろうが、今は生徒と地域の将来を第一に考え、知恵を絞ることが大切。特色ある教育の一例として、三重県では、紀南高校(御浜町)が以前から生徒数の減少で木本高校との統合の議論がされていたが、地域に根差したさまざまな取り組みにより"地域の学校"としてすっかり定着。また、相可高校(多気町)には、地産地消、食育の視点をもった食産業の担い手を育てる「食物調理科」があり、日本で初の高校生が運営するレストラン「まごの店」は行列ができるほどだ。
統合・単独いずれにしても特色ある学校を目指していくのが望まれる。当地方の基幹産業である農林漁業の後継者を育成するため、専門科を設置するのも一つ。特化した学科があれば、地元のみならず各地から生徒が集まる可能性もある。講師派遣や現地学習などで地域とのつながりがおのずと生まれ、学校がコミュニティーとしての役割も果たすようになるだろう。
今回、両校では子育て世代に限らず、幅広い世代からさまざまな意見を求めている。寄せられた意見は県教委に伝えるとともに、適宜整理して公表する予定。県教委は意見に対して十分に協議し、地元の声をできる限り反映させるよう努めてもらいたい。