学校を取材した時、児童生徒の意見や作品の出来の良さに感心することが多い。特に中学生や高校生にもなると、大人顔負けのクオリティのものも出てくることが珍しくない。
今年は紀北町の中学校の文化祭を回り、どの学校も素晴らしかったが、中でも紀北中の劇発表が印象深い。新型コロナウイルス感染症対策のために録画放映となり、まるで質のいい短編映画を見ているようだった。2年生の『銀杏と青』は、LGBTという難しい問題に正面から向き合いながらも、青春のさわやかさとほろ苦さを感じさせる出来栄えで、これがオリジナル作品だというから恐れ入る。
劇中でLGBTに対して「どう接していいか分からない」と悩む生徒がいたが、個人として共感する部分がある。LGBTに限らず差別はいけないことだとは理解しているつもりだが、悪意なく加害者になってしまうことへの恐怖がある。
「常識とは18歳までに身につけた偏見のコレクションである」とは物理学者のアインシュタインの言葉。「負うた子に教えられて浅瀬を渡る」とのたとえもあり、若い世代の柔軟な思考や姿勢を見ることが、差別のない世界の近道かもしれない。
(R)