とても興味深い記録を見つけた。和歌山県は全国でも6番目に多くの移民を送り出した県というのだ。特に紀南地方は多くの移民を送り出した地域として有名。和歌山県民史では、昭和15(1940)年には、米国、ブラジル、カナダ、オーストラリアなどの国に渡っている人が多い。中でも、東牟婁郡は県内最高の移民人口5620人を誇る。
紀南地方は平野も少なく、生活するには厳しい土地。当時の日本では農業や山仕事、漁業や船乗りをしても収入はごくわずかで、一回でもアメリカに渡れば仕事もたくさんあって、お金も倍以上もうかったとの証言もある。別の証言では、紀南地方の海岸線が長くて、沿岸に住む人たちは海に親しみが深い。海に出てよそに行くことは怖いどころか、むしろ好んでいたとと話している。
しかし、太平洋戦争で日本人移民は、強制収容所に入れられ、塗炭の苦しみを味わうことになる。移民の歴史の勉強は、移民の人たちが味わった苦労を、逆に紀南地方を訪れる海外の人たちに与えないための大きなヒントになる。
【茂】