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つながりが命をつなぐ 紀伊半島大水害後の子ども支援 研究チームが報告

「生きたかったのに、生きれなんだ級友の思いを感じながら、生き残った自分は明日から何をすべきか考える」—。研究「紀伊半島大水害後の子どもの心理的変化と支援の実態」の調査報告が1月31日夜、那智勝浦町教育委員会による「共育ミニ集会」という形で、町体育文化会館で行われた。研究チームの上野和久さん(高野山大学特任教授)は、当時のある校長が、災害後に生徒の死を全校集会で伝えた際のこの話が心に刺さると胸中を明かした。
 
 同研究は、災害後の子どもの心の変化の一端を明らかにするため、公衆衛生看護学・教育学・心理学を専門とする分野横断的な研究チームによって、被災後12年間の子どもの災害に関連した心理的影響について、対応している保健師、保育士、教職員らがどのように捉え、支援してきたかを調査するもの。
 
 研究を行ったのは上野さん、和歌山県立医科大学准教授の岡本光代さん、平安女学院大学准教授(元高野山大学講師)の佐々木聡さん(オンライン参加)、和歌山県立医科大学小児成育医療支援室主事の藤田絵理子さん(オンライン参加)の4人。
 
 発表も4人で行い、町内の教職員や保育士、保健師、助産師、スクールカウンセラー、学校運営協議会委員、行政関係者ら約40人が聞き入った。
 
 調査は2023年9月~2024年2月の期間、保健師・助産師6人、保育士5人、教職員14人に実施。1対1の30~60分程度のインタビューによって、被災経験や子どもの心理状態、支援者の反応、支援の実態などを語ってもらい、録音データを分析した。
 
 調査の中で、被災後は大人が環境変化に対応するのが大変だったこと、被災から半年後の異動で大変だったこと、子どもが外をずっと見てふるえていた記憶、保護者に園で元気だったなどの明るいことを伝えようとしていたこと、学校で子どもが自分を出さなくなったこと、子どもが落ち着かない状態(過覚醒)になったこと、保育士や教職員らも自分の心の緊張状態に気付いていなかったことなど、さまざまな状況がわかってきた。
 
 調査・分析の結果、被災直後には専門職集団内でのコミュニケーション(つながり)が重要で、そのために平時から専門職同士の信頼関係に基づく連携体制を構築する必要があるとわかったという。その後、保護者・家庭とのつながりを通じて大人同士が安心感を取り戻すプロセスが、子どもたちの安定感を築く一助となることが明らかになった。
 
 さらに中長期的な支援では地域全体の結び付きが必要で、特に過疎化が進む中で、地域の祭りの継続や学校・保育園の存続が災害時の心の回復と密接に関連していると結び付けた。
 
 調査報告を受け、当時那智中学校に勤務していた市野々小学校の木村享照校長は「当時、中学校はしんどかった。子どもたちの過覚醒が怖かった。対応できないと思った。自分もハイテンションだった。今日分かったのは、自分は新宮市民で勤務先が那智勝浦町だけど、自分も被災者だったのだということ。また、これからの使命を思った。学校をこれからも安全な場所にしていきたい」と話した。

      那智勝浦町

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