紀北町は２５日、１７年ぶりに水道料金等審議会を開き、尾上壽一町長が、持続可能で健全な経営を確保する観点から、水道料金のあり方を検討するよう諮問した。収益的収支は本年度予算では単年度赤字に陥る見通しを立てており、現行料金では将来にわたり赤字が拡大することが見こまれることから、水道料金の引き上げが求められている。
同審議会が開かれるのは、紀北町誕生後、平成２０年に旧海山町、旧紀伊長島町の料金制度を統一して以来１７年ぶり。開会にあたり尾上町長は、「この間、水道事業を取り巻く環境は大きく変化した。全国的に施設・管理の老朽化対策が喫緊の課題になっていることに加え、人口減少に伴う給水収益の減少、昨今の物価高の影響など、経営環境は極めて厳しい状況」と説明。「住民に安全で安心な水を将来にわたって安定的に供給し続けることは自治体にとって最大の責務」と述べた上で「中長期的な視点に立ち、本町の水道事業が持続可能であるための経営基盤の強化、そして利用者負担の公平性を考慮した適正な水道料金のあり方について幅広く意見をいただくために本審議会を設置し招集した。忌憚（きたん）のないご意見を」と呼び掛けた。
会長には紀北町連合自治会の中野直文会長が選ばれた。中野会長は「各自治体の水道事業は主に高度成長期に整備されたもので、多くの水道管が寿命を迎え、老朽化した水道管の交換や施設の維持管理に多額の費用が必要となっており、近年、多くの自治体が値上げを実施している。住民に安心して水道水を供給するためには、計画的な水道管の交換や施設の再構築が不可欠であることは十分認識している」と述べた。一方で、水道料金の上昇は低所得者や年金生活者に深刻な影響を及ぼすことになると指摘。「水道料金が高騰すれば他の生活費を削らざるを得ず、結果として住民の生活水準の低下を招き生存権を脅かす可能性がある」とも語り「最少の経費で最大の効果を上げることができるよう審議を進めたい」と語った。
同日の会合では、水道課から、水道会計の仕組みや概略、給水収益が徐々に減少する一方、更新が必要な設備が多くなっていること、燃料価格の高騰などで経費が増加していることについて説明が行われた。
現在の水道料金は口径１３ミリの場合基本料金が月額６００円で、８立方メートルまでは１立方メートル当たり６０円。基本料金は県内で４番目に安いグループで、尾鷲市は１４８０円、熊野市は１１７０円。
改定なしだと赤字膨らむ
現行の料金が変わらなければ、本年度当初予算ベースで令和７年度は収益的収支が約８００万円の赤字。赤字額は令和８年度は１７２０万円、９年度は１９６０万円の見込みで、その後も増加し、１５年度では６０００万円を超える額になると予想している。担当者は収益的収支が悪くなると、資本的収支の財源にも影響があると説明した。また、制度的な要因として、上水道事業には有利な補助金があまりないとの説明もあった。
委員からは「たたき台が必要」「（たたき台の内容も）水道料金だけでなく、町がこう変わっていくので、水道料金はこうなる、というものがあればいい」「浄化槽の（点検・清掃）値段も上がっている。水道料金が上がるなら、浄化槽の値段が下がるような仕組みがほしい」との意見があった。また、町のリフォーム補助金はろう水に対応できず「急なろう水時にも使える仕組みを」との声も出た。
宮原優水道課長によると年度内もしくは来年度初めまでにあと２回または３回審議を行い、新たな料金を決め、来年度途中から新料金に切り替えたい考え。次回は１月１６日を軸に日程を調整し、たたき台となる料金案を示すことにしている。
尾鷲市は６年度に水道料金を平均３４.６％引き上げる改定を実施。熊野市も６年８月から１６年度にかけて順次引き上げを行っている。１６年４月には基本料金を１７００円にすることになっている。
中野会長を除く委員は次の皆さん。かっこ内は所属。
- 𦚰 由美（町婦人会長）
- 堀内里美（女性会議きほく会長）
- 宮地弥生（町ＰＴＡ連絡協議会幼児家庭教育委員）
- 藤村達司（みえ熊野古道商工会会長）
- 東 城（紀北町観光協会専務理事）
- 片岡孝行（三重外湾漁業協同組合長島事業所長）
- 井土和久（町社会福祉協議会長）
- 𦚰 順子（町民生委員・児童委員協議会長）
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