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地域ぐるみで獣害対策 紀宝町阪松原地区 国の交付金利用

 近年、人間の生活空間と野生動物との距離が近くなり、サル、イノシシ、シカなどによって田畑が荒らされたり家屋に侵入されるなど、被害は深刻化している。人間の生活圏と野生鳥獣が住む「奥山」との緩衝地帯の役割を果たしていた「里山」や「農地」が、生活様式の変化や農林業の衰退で管理できなくなったことなどが原因といわれている。

 紀宝町でも町全体で被害が報告されている。米どころの相野谷川筋では水稲、井田地区ではミカンなど、地区ごとに被害にあう農作物に違いはあるが、ここ数年で一気に増えてきているという。
 
 相野谷川筋の阪松原地区では、地区全体で獣害対策に取り組んでいる。約30年前に、地区内の水田でほ場整備が行われ、多くの棚田が大型機械が入れる水田に姿を変えた。地区に長年住む田中義輝さんによると、当時は獣害はほとんどなく、山奥で出会ったシカの群れが珍しく驚いた記憶があるという。
 
 15年ほど前から徐々に被害が出始めたため、同地区ではネットや電気柵を張り巡らせて、エリア全体の水田を1つの柵で囲った。平成28年から令和4年にかけては、国の鳥獣被害防止総合対策整備交付金を利用して、イノシシとシカに対応するため、より強度の高い鉄製のワイヤーメッシュの溶接金網に順次交換。金網の上部に3本電線の電気柵を設置してサル対策も施した。田植えが始まる前に全員で柵が外れている箇所はないかなどを確認し、きちんと通電するかチェックしているという。
 
 また3年前からは、獣害研究家の「雅(まさ)ねえ」こと、井上雅央さん指導のもと、地区に野生動物を近寄らせない環境づくりにも継続して取り組んでいる。雅ねえさんは島根県美郷町在住で、獣害対策成功の立役者の1人。獣害に悩む全国各地で講座を開いている。
 
 
■できること一歩ずつ
 
 11・12日の2日間、みえ森と緑の県民税市町交付金事業を活用し、町立図書館主催で雅ねえさんの講座が行われた。初日は紀宝はぐくみの森、2日目は阪松原生活改善センターでそれぞれ「獣害に強い豊かな里山づくり」をテーマに講話した。
 
 雅ねえさんは「獣害対策は行政頼みではなく、地域のみんなで学び、守れる田畑や集落にすることが大事。囲いや追い払いから始めると失敗する」と説明。「動物は安心して餌が食べられるところに住みたいから、敵がいない場所にやって来る。当たり前のことが起こっているだけ」と話した。
 
 安全な場所ではないことを知らせることが必要で、誰かが野生動物を追い払っていたら応戦して敵と認識させる、稲刈りが終わっても電気柵は常に電気を通すなどの対策が有効。また、庭木の裾枝を切って隠れ場所を作らない、柵の近くに作物を植えない、エサとなる新芽を冬場に生やさないために10月以降に草刈りをしない−などの工夫を紹介し、「できることをしっかりやる。一度ではなく少しずつ変えていくのが獣害対策の第一歩」と話した。
 
 阪松原会場では「1年、2年経っても田んぼは荒れていない」と評価。「住民同士で教え合うことで地域は強くなる」と強調した。
 
 
【クマ対策は】
 紀宝町産業振興課によると、最近全国的にニュースとなっているクマに関しては、紀宝町内の目撃情報が少ないことから、具体的な対策はまだ立てていない。町と県、警察、地元猟友会、自治会が連携して、対策や情報共有を行うことが検討されており、他地域の対応を参考にしながら個々のケースに応じた対応を行っていくことになるという。

      紀宝町

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