早朝のまだ薄暗いうちに、大きなカブトムシを見つけた。黒く光る立派な角に心を引かれ、捕まえようかと思ったが、最後まで世話をする自信がないと思い直して、そっと眺めるだけにした。近くにはセミの抜け殻もあり、夏らしい光景が広がっていた。
帰宅後、まだ同じ場所にいるカブトムシ。もうほとんど動かず、弱っているようだった。夏を懸命に生き、その短い命を終えようとしていたのかもしれないと思うと、少し切ない気持ちになった。
夏が好きではなくなってしまったのは、いつの頃からだろうか。子どもの頃は長い夏休みや水泳、祭りなど楽しみばかりだったのに、大人になると暑さや日焼け、虫、食中毒、冷房代など気になることが先に浮かぶ。セミの大合唱も、季節感よりも「暑さが増す」とうっとうしく感じてしまうことがある。
カブトムシや抜け殻は、夏を心待ちにしていた頃の気持ちを少しよみがえらせてくれる。暑い、暑いとこぼしてばかりではもったいない。童心に帰って身近な夏を探してみると、少しは暑さが紛れるかもしれない。
【織】
