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紀南抄「夏の季語」

 「長持(ながもち)に 春ぞくれ行く 更衣(ころもがえ)」。井原西鶴が詠んだ一句で、着物を衣替えでしまえば、春までもがまるで長持(衣服を入れる木箱)の中に暮れていくようだ、という心情を見事に描写している。わかりにくいが季語は「更衣」。「春」という単語が入っているが、初夏の句である。

 季語を入れるのがルールの俳句。見ていると、意外なものが季語になっていることが多い。例えば「甘酒」は、温かいものを冬に飲むイメージがあるが、かつては「暑気払い」に温めて飲んだことから、夏の季語となっている。

 カタカナの季語もあり、「アロハシャツ」「ゼリー」「バンガロー」「ビール」など、夏のものはなんとも陽気で、のんびりした気分になる。

 一方、旧暦を中心に考えられてきた経緯から、夏のようでいて秋の季語、というのもある。「朝顔」「スイカ」「天の川」「盆踊り」「ゴーヤー」などは、全て秋を表すというから驚きだ。

 6月30日には各地で夏越の大祓が行われ、1年も半分を折り返したのだと実感する。一日も一年も一生も、くれ行くことこそありがたく美しい。

【稜】

      7月 1日の記事

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