尾鷲市は18日、市内南浦の山林に仕掛けていた箱わなでツキノワグマ1頭を捕獲したと発表した。市は「人間は怖い」と感じさせる学習をさせた後、山深い市有林に放獣した。市水産農林課の芝山有朋課長は「6月に入って市内で目撃されていたツキノワグマである可能性もあるが、引き続き注意喚起と捕獲檻(おり)の設置を継続していく」と話した。
市内でツキノワグマが相次いで目撃され、民家近くにも出没していたことから13日に箱わなを設置していた。17日午前9時30分ごろ、現場を確認しに行った獣害パトロール員が、クマらしき動物がわなに入っているのを発見。神戸市から専門業者を呼び、麻酔をかけた上でわなの外に出しツキノワグマと確認した。
クマは体長111センチ、体重38キロ。推定3~4歳以上のオスとみられる。芝山水産農林課長は専門家の話として、この年代のクマは繁殖可能な状態になり、メスを求めて、また、縄張りを形成するのに「よくうろつく時期」と説明。「早期に捕獲できてよかった」と語った。わなには、クマが好むはちみつを入れ、合わせて蜜ロウなども混ぜるなど、獣害パトロール員が工夫したという。
業者は「(目撃されていたクマの)可能性はあるが、断言できない。また、同じクマであっても、別のクマが今後出没する可能性がある」と話しているといい、あらためて県の許可を取り、わなの設置は継続する。仕掛ける場所は再度検討することにしている。
芝山水産農林課長は「このまま目撃情報が終息してほしい」とコメント。また「古道を歩く人、山に入る人は必ず鈴やラジオなど音の出るものを持って入ってほしい。万が一の時は笛が有効と聞いている」と話し、引き続き注意を呼び掛けている。
市は、A2判ポスター70枚を作り、市の掲示板や公共施設などに掲示するほか、市内の主婦の店やコンビニエンスストアなどに協力を呼び掛け、来訪者への注意喚起を行う。
クマは、捕獲した場所や時間、大きさなどを記録した固定特定用のマイクロチップのついたイヤータグを付け、最も近い民家から直線で2キロ以上離れた市有林のうち、直近に手を入れる予定のない場所で放した。わなの缶を叩いたり、大声を出してりして人間は怖いと認知させる「学習放獣」という手法を用いたという。