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紀南抄「『熊野』というエスニック」

 「エスニック」とは、英語で「民族の」という意味の形容詞。特にアジア、アフリカ、ラテンアメリカのものを指すことが多い。「風俗・習慣などが民族特有であるさま」とも解釈され、「エスニック料理」「エスニックな音楽」など、日本語でも用いられる。

 熊野本宮大社の例大祭「本宮祭」が13日~15日の3日間であった。世界遺産登録20周年を機に、今年は初めて8か国約25人の外国人も神輿(みこし)を担いだ。生まれた国、肌の色、話す言語は違っても、「ワッショイ、ワッショイ」と声を合わせ、神様の渡御に力を尽くせる。「貴賤男女の隔てなく、浄不浄を問わず」。彼らの晴れ晴れとした表情を見ていると、そういう熊野の懐の深さ、あるいは神道の精神性の”やわらかさ”が伝わったのだろうとうれしくなる。

 大学時代、教授が「和食ほどエスニックな料理はない」と語っていた。外から見れば日本は大陸の東の端の辺ぴな土地で、熊野はさらにその最果てにある。エスニック中のエスニックであるこの土地に、人類普遍の祈りが根を張っている。この度の本宮祭はその証左ではないか。

【稜】

      4月18日の記事

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