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紀南抄「言の葉」

 「ふるさとの言葉の中にすわる」。種田山頭火の一句。瞬時に感覚を呼び覚ますような不思議な力がある。
 
 昔からちょっとした言葉遣いの誤りや言い間違いを指摘される家に育ったためか、言葉には関心がある。幼い頃にテレビの音楽番組で、リズム感のある言葉を面白おかしく紹介しているコーナーがありすごく感心した。印象に残っているのは「高津区」。神奈川県川崎市に実際にある区なのだが、意味を無視して語感だけに集中すると「タカツク」。繰り返すと「タカツクタカツク」。まるで打楽器で軽いリズムを取っているような音である。
 
 言葉を意味以外の視点からとらえているところに惹かれた。そう考えてみると会話も音である。元お笑い芸人の島田紳助氏は「会話にもキー(調子)がある」とした。話の上手な人はその音感が優れていて、絶対にキーを外さないのだという。話した瞬間、そこに調子が生じる。
 
 言葉には、人には到底理解しえない領域があると感じる。例えば、本当によい文章表現について考える時、私は、何も書かなくても伝わる事なのだろうという矛盾した解にたどり着く。
 
 【稜】

      11月20日の記事

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