紀州藩が〝ワニ〟に関する情報を報告するように求めた少し変わった通達に関する展示が、尾鷲市中村町の同市立中央公民館1階の郷土室で行われている。
常設展示と年2回ほど行っている企画展で紹介しきれない話題を、数点の資料で取り上げるミニ企画展で、4月からおおむね月替わりで行っている。
今回は「紀州藩の魚御用 『わに』の捜索と尾鷲組の調査報告」がテーマ。明和7(1770)年1月、紀州藩は領内へ「わに」に関する情報提供を呼び掛けており、尾鷲大庄屋文書に残る調査依頼と、2度目の問い合わせに関する尾鷲組の回答に関する古文書、ワニを紹介した当時の事典『和漢三才図絵』(1712年刊)など計4点を紹介している。
当時、サメのことをワニと呼んでいた地域もあるが、紀州藩からの問い合わせには「わにと申魚」の特徴として「形はイモリに似て」「腹は蛇腹」「四本足で爪がある」などと書かれていて、現代人がワニと聞いて思い浮かべる動物と同じものということが分かる。
市教育委員会の脇田大輔学芸員によると、1月に通達があった後、6月に「念入りに調査するように」と再度通達があり、尾鷲組からは「漁師たちがまれに沖合で見かけるが、見かけたら何を差し置いても逃げるので、全体を見た者はいない」などと回答しているという。
脇田さんは「なぜ情報提供を求めているのかは分からない」と言い、「幕府のお触書集に記録がない」ことから、幕府全体で探していたものではないとの見方を示す。尾鷲組の回答については、嘘を報告した可能性も、ある種のサメのことの可能性もある、と想像する。「話題になることで、他地域でもワニを探していた記録がある、など、広がりが出てくれば面白い」と話していた。
展示は9月下旬ごろまでの予定。朝9時から午後8時30分まで、自由に見ることができる。詳しい解説文も設置している。