海山郷土資料館で、この地域の映画館や劇場についてまとめた企画展が開かれている。映画全盛期を振り返るインタビューを読んでいると、人があふれるほどにぎわっていたまちの様子がうかがえる。
一般家庭にテレビが普及すれば、映画館や劇場が廃れていくのは必然といえる。現在では動画サイトや娯楽の多様化でテレビ離れが叫ばれている。ニュースや動画、漫画、音楽とスマホ一つですむ技術の進歩は素晴らしい。ただ、「いつでもどこでも楽しめる」ことが、一つの作品に没頭する楽しさを妨げているようにも思う。
生産工学を学んでいた時、システムの効率性を高めると不測の事態に対応しにくくなる、という講師の余談が印象に残っている。かつて〝ジャパン・アズ・ナンバーワン〟と呼ばれた日本が失速したのは、効率化を求めて無駄を排除した結果、何かを生み出す余裕も失ったのではないか。社会的に経済効率を上げる東京一極集中により、過疎化したまちからは祭りや文化が消えていった。
時代は移り変わり、多様性に価値が見出される時代となった。であれば、日本の再生の可能性は地方に住む多様な人々や文化が持つ魅力にあるといえる。
(R)