毎年9月4日を迎えると、紀伊半島大水害を思い出す。これまでに経験したことのない大雨と洪水、土砂崩れ。あの惨状は今でも脳裏に焼き付いている。けれど確実に風化は進んでいて、忘れてしまっていることも増えてきた。当時1歳だったわが子は、中学生になった。
宅配便の人に11年前の状況について聞く機会があった。災害の翌々日、道路が通行可能になるとすぐに被災地域にも配達に回ったという。一面がまだ泥だらけで走行が危険な中、住民が避難所にいたり、荷物を受け取れる状況ではなかったりしたそうだが、荷物は届くので毎日配達に行かなければならない。また別の食品配送業者の人は、被害の大きかった山間部に商品を持って行くと、怒られたり受け取り拒否されたりしたという。一方で、よく来てくれた、ありがとう、助かったと感謝もされたと言っていた。
今日もまた日本のどこかで、台風や局地豪雨などによる大規模災害が発生している。新宮消防の職員のうち、4割が紀伊半島大水害の現場経験がないという。今後起こりうる災害に備え、若い世代に伝えることが私たちの役割だと思う。
【織】