人に物事を教えるのは難しいなあと思う。小中でバスケチームのキャプテン、バイトで時間帯責任者などをしていて、その壁に何度もぶち当たった。
先日、和歌山県警を定年退職して今月から新宮市職員となった宮戸伸之八段の取材をさせてもらった。剣道では八段教士という異次元の称号を持ちながらも話した印象はすごくやわらかく、一介の記者にも興味を持って丁寧に話してくださった。警察官時代は警察学校などで指導者として長く勤め、剣道でも警察でも多くの教え子からしたわれている。
宮戸さんの剣道の指導方針は「楽しさを伝えること」という。剣道は遊びから生まれたスポーツとは違い人を斬ることから派生しているため、その稽古は自然と厳しいものになる。それでも、子どもから高齢者までが同じ床の上で竹刀を握れることが剣道の魅力だと、宮戸さんは目を輝かせた。
本質的な指導だと思った。楽しさをはじめその物事との関わり方がわかれば、技術や理屈は後から付いてくる。そのためには教える本人が関わり方を積極的に見せることが大事なのだろう。宮戸さんの少年のような話しぶりから、そう感じた。
【稜】