新型コロナウイルスの感染状況が落ち着きを見せる中、当地方でも飲食やイベント、移動に関して徐々に動き出し、年末年始にかけて社会経済活動の本格的な再開が見込まれる。一方で、南アフリカで新たに見つかった変異株のオミクロン株は世界各国で次々と確認され、日本でも11月30日に国内1例目が、翌日には2例目が確認された。コロナ禍で迎える2度目の年末年始は期待と不安が入り混じる。
年末年始で帰省を予定している人は多い。自粛生活が続き、「ようやく」の思いで楽しみにしていることだろう。人々の移動が激しくなれば、当然感染リスクは上がるが、コロナとの闘いは新たな局面を迎えているという意識で、マスク着用、手指消毒やうがい、人同士の距離をとるなど、基本的な感染防止対策を忘れずにしてほしい。飲食店や観光施設など迎える側もさまざまな対策を講じて安全安心を呼び掛けており、双方の意識が高ければおのずとリスクは軽減される。
一人一人に高く意識してもらうには、各自治体の情報提供や注意喚起が必要になる。感染者が再び増加に転じれば、この地域の医療体制にも影響が出ることや、動き出した経済活動が停滞してしまうことなども伝えなければならない。
昨年末から停止している政府の観光支援策「GoToトラベル」に関しては年明けに再開する方向で調整が進んでいたが、岸田文雄首相は「(新型コロナウイルスの)年末年始の感染状況を見て検討したい」と述べた。オミクロン株の感染拡大を踏まえ、慎重に判断する考えを示したもので、現状を見れば仕方のないことか。
一方で、全国の緊急事態宣言が明けた10月以降、感染者数が抑えられているのはワクチン接種の効果が大きい。しかし、ワクチン接種が日本より先行した欧米では、行動規制緩和後に新規感染者が急増している。接種から半年以上経過すると、効果が下がるとの医学的な知見があり、実際に国内外で接種後の「ブレークスルー感染」が相次いでいる。
3回目の接種は2回目終了から8か月以上を原則に、一部で6か月に短縮される方向だが、今は落ち着いている感染者が増加に転じた場合、3回目接種を前倒しする動きが出てくると見られる。その際、国からのワクチン供給と需要のバランスが保てるよう、各自治体は対応を迫られることになり、今からこれを想定した準備に努めてもらいたい。