橋本市立あやの台小学校の6年生らが那智勝浦町を訪れ、水害学習を行っていった。児童らは話を聞くだけでなく多くの質問を投げかけていた。
その中で、紀伊半島大水害記念公園の慰霊碑に黙祷をささげる場面があった。土砂災害啓発センターを介しての水害学習で黙祷を行った学校は初めてという。慰霊碑にあいさつした児童は「どうか安らかにお眠りください」と伝えていた。
名前も知らない、年代も違う犠牲者たちを、次の世代が悼(いた)む姿である。遺族会など精力的に伝える活動を続けてきた人たちは「人は忘れる。伝えなければ」とよく口にした。ある人はそれが自分の償いだと言い、ある人は自分の使命だと言った。そんな人々の願いが児童らと水害をつなげたのだと感じる。
学習の後半、児童らは事前に備えることの大切さを口にしていた。同校のほかにもいくつもの学校が修学旅行などで水害学習を行っている。伝え続ける活動の先に、ゴールはないのかもしれない。結果も目に見えるものではない。しかしこの学習で一人でも犠牲者が減るのならば、遺族らの思いは実を結んだことになるのではないか。
【稜】