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紀南抄「城下町特有の雰囲気」

 仕事で新宮城跡(丹鶴城跡)に行った。駐車場から城壁を横目に階段を上る。一画に丹鶴姫の石碑がある。なんとなく手を合わせてみた。
 
 城下町には特有の雰囲気がある。開拓の地・北海道生まれである当方にとっては不思議だ。現代で城を意識して生活するということは特段ないが、城下町で生活しているとふとした時に意識の表層に浮かび、思いをはせることがある。
 
 沖縄県の首里城が火災に遭い中心施設7棟が全焼した2019年当時、同県に住んでいた。普段、沖縄出身のいわゆる「ウチナーンチュ」の友達と話していても、首里城は一つの観光名所くらいのイメージだが、燃えたことに関しては皆愕(がく)然としていたのを覚えている。火災当日、首里城に向かおうと渋滞する車の列も目の当たりにした。「沖縄は城下町だったのか」とその時に理解した。
 
 城は小高い場所に建てられる。生活圏内でも見上げる位置にその土地のルーツを思わせる建造物があるのは特別な意味合いがあるのかもしれない。合掌しながらそんなことを思った。丹鶴城の象徴性や丹鶴姫の名が「丹鶴ホール」に引き継がれるということの意味を、今、改めて考えたい。
 
【稜】

      6月21日の記事

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