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紀南抄「田植えシーズンスタート」

 暖かくなる日が次第に増え、田植えに向けて田んぼ周辺が騒がしくなってきた。身内の田んぼでも準備に追われ、休日には私の家族も草刈りなどの手伝いに出向いている。
 
 この時期、田んぼに水を引くと見慣れた景色が一変する。特に風のない夜には、家の灯(あか)りや街灯が水に映り込み、まるで一帯が巨大な湖になったよう。圧巻の風景にしばらく見入ってしまう。1年に1度、田植えが始まるまでのほんのわずかな私の楽しみ。
 
 米どころに住んでいると、1年を通してさまざまな景色の移り変わりが楽しめる。春の田植えが終わってしばらくすると青々と成長した稲が一面に広がる。収穫の秋には黄金色に輝く穂が垂れ、稲刈りが終わるとしばらく静かな時間が訪れる。
 
 大切にしたい日本の原風景だが、近年は高齢化や過疎化で耕作放棄地が増えている。これが不法投棄や野生動物の侵入などの原因となっており、国を挙げての対策が必要となっている。
 
 先日、米づくりに従事する若者に出会った。自宅から離れた田んぼの耕作も担っているという。将来の日本を支える若い力を頼もしく思った。
 
【織】

      3月31日の記事

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