まもなく梅雨入りを迎える。そして台風シーズン。地震もいつ発生するか分からない。新型コロナウイルスの影響が長期化する中で、「3密」(密閉・密集・密接)の典型である災害時の避難所運営をどのようにするのか、各自治体は準備を急ぐ必要がある。
災害時の避難所は学校や地区の公民館など、あらかじめ各自治体が指定している。避難所で個々にできる対策といえば、手洗いや消毒、マスク着用、検温だろう。一方で3密回避のための空間確保は自治体の責務。新宮市によると、昨年8月の台風10号で避難所を開設した際、市福祉センターにはピーク時で37人が避難した。最低でも1メートル、できれば2メートルの間隔を開けることが求められるが、その対応を行っても複数の部屋を使って70人程度は収容できるとした。
しかし、これから本格的な暑さとなり、ましてマスク着用となれば熱中症への危険が高まる。学校の体育館はエアコンが完備されておらず、避難所の適性として疑問符がつくが、全国各地では、エアコンが完備された普通教室を開放する動きが加速。先日の新宮市議会常任委員会でも教室開放への検討を早急に進めるよう提言があった。
避難者同士の十分な間隔を取るために人数を制限し、その分避難所を増やすという選択肢もあるが、それができる自治体ばかりではない。親戚や知人宅などに逃れる縁故避難を呼び掛けたり、ホテルなどの宿泊施設と客室使用協力の協定を結んだり、新たな形を取り入れていくことも一つだろう。
また、三重県は先日、県内での大規模水害の発生を想定し、国土交通省や桑名市と合同訓練を実施。この中で、桑名市は避難所での感染を防ぐため収容人数を3分の1に減らし、市民を近隣の市町の避難所などに分散させる広域避難を決め、受け入れ先となる市や町との調整を県が行った。こうした訓練によるシミュレーションも大切だ。
新型コロナの第2波、第3波を考えると、自然災害との「複合災害」への懸念はしばらくぬぐえない。避難所でクラスター(感染者集団)を出さないための感染防止対策はもちろんだが、対コロナの暫定的な対策ではなく、雑魚寝状態の避難所の考えを改め、今後の避難所運営のあり方を根本的に見直す機会にしてもらいたい。