「選挙は未来の選択」。昨年10月、和歌山県が県立新翔高校で実施した探究学習で県職員が伝えた言葉だ。投票権が18歳以上に引き下げられて以降、低迷する若年層の投票率向上につなげようと、このような“出前講座”は各学校で見られ、実際の投票箱を用いて模擬選挙を行うなど、生徒も貴重な一票の重みを肌で感じている。
選挙には、衆議院議員や参議院議員を選ぶ国政選挙と、県知事、市町村長、県議会議員、市町村議会議員を選ぶ地方選挙があり、特に地方選挙は自分たちの身近な代表者を選ぶものとして一層関心が高い。昔から地方選挙ほど地縁血縁が色濃く反映され、選挙期間中は候補者が選挙カーを町中に繰り返し走らせ、各所での街頭演説の応酬により、まちは選挙ムード一色という光景が普通だった。
ところが、住民の選択肢がないままに無投票で決まる地方選挙の割合が全国的に高くなっている。投票権を得た高校生たちが早速、投票行動を起こす機会があってもできないというケースも珍しくない。
当地方では各地で選挙が控えている。まずは今月28日告示、6月2日投開票の日程で、古座川町の町長選と町議選がある。町長選は現職と新人の一騎打ちの様相、今回から定数1減の9となった町議選には12陣営が立候補予定で激戦必至だ。
一方で、ともに7月9日告示、同14日投開票の太地町長選と北山村長選は無投票の可能性がある。太地町長選は現職が6選を目指して出馬する意思を表明している以外に目立った動きはない。2008年以降の同町長選では2016年を除き3回が無投票で決まっている。
北山村長選については、現職が先日、健康面などを理由に出馬しない考えを明らかにした。同村長選も2008年以降の4回の選挙のうち3回が無投票。今回の村長選に向け、正式に出馬を表明した人はおらず情勢は不透明だが、水面下で後継者を一本化する動きもあるようで、選挙戦に突入する可能性は低いと思われる。
先月行われた白浜町長選は、現職・新人の計4人による激しい選挙戦が繰り広げられ、元参院議員の新人が初当選した。同町長選は過去3回も3人が争ったように、住民の選択肢が常にある状態が続く。
無投票の選挙が今後も続くようであれば、特に若年層の政治離れが加速するという危機感を持たなければならない。やはり4年に一度の選挙では、住民一人一人が自らの意思表示を行える環境が大切で、そのことが政治やまちづくりへの関心につながる。