地域公共交通のあり方が転機を迎えている。高齢化により、特に中心市街地から離れた場所で必要性が高まっている一方、そのような場所ほど採算がとれないため、路線の縮小や廃止につながる悪循環に加え、バス路線を巡っては働き方改革によるドライバー不足で路線がなくなる事態も生じている。国レベルでは、ライドシェア解禁への期待が高まるほか、自動運転技術が交通の課題解決の鍵になるという話が出ている。
問題は複合的だ。集落の人口減少により、日々の買い物や通院のために車が不可欠であるにもかかわらず、高齢化で車の運転がおぼつかないという人が増えている。人口減は事業者側の路線維持にも響く。全国では、一部鉄道会社が本年に入り、赤字路線区間を公表して沿線自治体に協議を促すなど何かと話題になっている。
尾鷲市のふれあいバスは本年度、八鬼山線とハラソ線を「九鬼・早田線」「北輪内線」「南輪内線」の3路線に再編。来年度は行野浦(松本)便を増便するほか、2便は光ヶ丘から小原野に延伸するなど、こつこつと利便性向上を図っている。紀北町では、おでかけ応援サービス「えがお」が利用者を伸ばしている。一方、町内を走る「いこかバス」は路線によっては苦戦している。
尾鷲市では、「えがお」のような必要性に応じて配車される仕組みの導入を求める声がある。紀北町では、尾鷲市内の病院への通院に利用したいとの声が根強い。
自治体交通は既存事業者の事業を妨げないのが前提で、事業者が撤退してしまうと元も子も無くなるが、ニーズと課題解決のために取れる手段が多様化しているのも事実。課題は地域ごとに異なるものの、多くの地域で困っている状況にある。それぞれの地域がベストな選択ができるよう、制度改正や補助の充実を国に働き掛けていくことが必要だ。