紀北町長島の紀伊長島郷土資料室で、第28回企画展「戦後78年 戦争の記憶をつなぐ 三野瀬駅列車銃撃事件・尾鷲北牟婁徴用漁船」が開かれている。三浦にある三野瀬駅の列車銃撃や紀伊長島駅前空襲、徴用されて戦場に出された漁船など、戦火がもたらした地域の被害をまとめた資料が展示されている。27日(日)まで。
三野瀬駅の列車が銃撃されたのは、昭和20年7月25日午後1時ごろ。駅構内に停車中の列車にグラマンF6Fヘルキャット戦闘機4機が機銃掃射とロケット弾で攻撃。被害は正確には分かっていないものの、死傷者数は十数人とも五十数人ともいわれている。
この戦闘機は沖縄陥落後に出陣したアメリカ海軍第38機動部隊に属している。7月16日にはイギリス海軍第37機動部隊が合流し、24日から三重を含む西日本に攻撃を仕掛けており、24日には名張市の赤目口駅、28日には尾鷲湾で海軍熊野灘部隊を攻撃している。
紀伊長島駅前が空襲されたのは、この2か月前の5月14日。午前8時ごろB29が投下した焼夷弾で、駅前にあった二郷小学校や民家など三十数戸が焼失した。この日は名古屋で大規模な空襲があり、338人が死亡し、名古屋城が延焼している。紀伊長島の空襲は、名古屋へ向かうB29が行きがけに焼夷弾を落としていったと考えられる。
太平洋戦争では、海運会社の商船や漁船が徴用され、兵士や物資の輸送船として使われた。『戦没船を記録する会』の資料によると、長島港10隻、二郷港3隻、引本港21隻の漁船が徴用されている。北牟婁郡の漁船は尾鷲港に集められ、船主に乗組員の確保を強制的に依頼する指示が確認できる。
海軍に徴用された漁船の一部は戦火に巻き込まれ沈没の憂き目にあっている。同会の資料には、須賀利漁業組合所属の漁船を見ると、19、20年にサイパン沖や南方洋上で沈没したとあり、この地域の漁師が軍属として遠方で散っていったことが分かる。
企画した担当の浅原俊昭さんは「戦争を知らない世代が増え、戦争に対する意識も変化しつつあるが、多くの犠牲の反省に今の平和な日本があることを忘れてはならない。この地域に関連した戦争の事柄を知ることで、二度と戦争をしてはならないと感じてほしい」と話している。
開館時間は午前9時から午後5時までで、最終日は午後4時まで。月曜日と祝日は休館。問い合わせは、紀伊長島郷土資料室(0597-47-3906)。
海山公では原爆展
紀北町の海山公民館では原爆展が開かれており、ロビーには原爆被害の写真や絵画パネル16点が展示されている。15日(火)まで。
戦争や原爆の被害や惨状を伝え、核兵器のない平和な世界を実現するために、毎年この時期に行っている。町の担当者は「辛い過去や歴史を風化させず、平和とつないでいかなければならない」と話している。
入場は無料で、開館時間は午前8時30分から午後5時まで、最終日の15日は午後4時まで。期間中の11日(金・祝)と14日(月)は休館日。
▼イベント情報
・第28回企画展「戦後78年 戦争の記憶をつなぐ」
- 日時
8月27日(日)まで
午前9時~午後5時(最終日は午後4時) - 場所
紀伊長島郷土資料室(紀北町長島)
休館/月曜日と祝日
- 問合せ
紀伊長島郷土資料室(0597-47-3906)
・原爆展
- 日時
8月15日(火)まで
午前8時30分~午後5時(最終日は午後4時まで) - 場所
海山公民館
8月11日(金・祝)と14日(月)