4年ぶりに行われた桑名市の多度大社の上げ馬神事は転倒した馬が殺処分となり、環境保護団体が氏子を刑事告発する事態に発展した。地域と不可分の祭りが批判されるのは辛いことと察する。
上げ馬神事や動物愛護についての是非はさておくとして、新たな価値観と伝統文化の共生は大きな課題の一つ。とりわけ、本紙地域は、男女の役割がはっきりと分かれている神事や祭事が多い。単純にジェンダー平等で画一的にしてはならない、地域に根付いた文化の多様性がある。
上げ馬神事と同じく県の無形文化財のヤーヤ祭りの練りは勇壮だが、ここに女性や子どもが入れば不測の事態もあり得る。だが、練りに入っていないだけで、見守る人、掛け声を掛ける人、支える人、全てが祭りに参加している。「私が男だったら絶対に参加したのに」と、練る若衆を羨ましそうに、それでいて誇らしげに見る女性を覚えている。
社会は変わっていくとしても、この地域に根付く伝統文化を守るために、論理的に体系づけ、言語化しておく必要がある。
(R)