新型コロナウイルスの感染者が先月から減少し落ち着きを見せはじめ、当地方の観光地には他府県ナンバーの大型バスを見かけることが多くなってきた。コロナ前はインバウンド(訪日外国人客)を含め誘客が好調で、観光業が当地方の主産業の一つと言え、さまざまな業種に効果をもたらしていた。コロナの影響で約2年間、不況に苦しんだ関係者は今回「ようやく」の思いが強いのでは。
新宮市商工観光課によると、浮島の森、旧チャップマン邸、徐福公園の各施設では、全国の緊急事態宣言が解除された10月以降、来訪者が増え出した。昨年の今頃はGoToトラベルキャンペーンが盛りで、その時には及ばないものの、宿泊施設や飲食店にも少しずつ明るい兆しが見えてきたか。田辺市本宮町の熊野本宮観光協会でも10月以降、観光客が戻っているという感触を得ている。施設の駐車場にはコロナ前同様、多くの車が止まっているが、宿泊施設はまだ増えている実感はなく、日帰り客が増えているもようだ。
那智勝浦町では10月以降の増加分のうち、平日は修学旅行(教育旅行)の利用が多い。県内中心だが、隣県の三重、奈良からの来訪もあり、今後も受け入れ定着を狙う。また、県のリフレッシュプランが年内で終了するのと、観光消費が落ち込む年明けに備え、誘客への対策として町事業で割引クーポンの発行を予定し、先日の臨時議会で予算が認められた。
新宮市は先月下旬、大阪駅で開かれた和歌山県主催のプロモーション活動に参加、誘客に努めていた。また都市部の旅行会社等へのPR活動は今後も順次予定しているが、年明け2月ごろにも再開が見込まれるGoToで落ち込んだ分を取り戻すためにも、しっかりアピールをして出遅れないでほしい。
一方で、コロナ第6波への懸念もある。関係者は一様に、感染防止対策はこれまで通り、来る側も受け入れる側も基本的な対策を講じ、安全・安心な旅行環境を心掛ける必要性を訴える。感染が落ち着いている今のうちに、ウィズコロナの観光モデルを構築し、しっかりと住民にも周知していくのも観光行政の役割の一つ。また、第6波が到来した際の各施設の対応についてもあらかじめ定め、明文化しておけば混乱も最小限に抑えることができるだろう。
今後も人口減少が続く中、地域外からのお金の獲得がこの地方の経済を安定させるうえで欠かせない。ウィズコロナ、アフターコロナの時代をどのように渡り歩いていくかという課題に対し、官民一体で、時には市町村の枠を超えた取り組みも、検討すべきではないだろうか。