同じ言葉でも、発話を取り巻く環境で意味が違うことがある。前後の文脈は忘れてしまったが、ある哲学者が「喫茶店で『ホット』と言えば、ホットコーヒーが出てくる」とエッセイに書いていたのを思い出す。子どもが「アイス」と言えば、店員さんはアイスコーヒーでなくアイスクリームを出してくれるだろう。
リニアと聞けばたいていの人はリニア中央新幹線を想像するのではないか。素粒子物理学者なら次世代加速器、国際リニアコライダーが思い浮かぶかもしれない。先だって、政府の基本構想への申請が取り下げられていたと報道されていた。
尾鷲総合病院で来年度に更新が予定されているリニアック。加藤千速市長が「営業する」と言っているが、市長の言う「営業」と、聞いた人が理解するものが食い違う可能性がある。更新するなら収益を上げることは重要だ。
尾鷲市と紀北町の患者だけでなく、東紀州あるいは全国から療養を兼ねて尾鷲に来てもらう。その取り組みも「営業」のうちだろう。取り組み内容を吟味して、来年度の更新か、先送りかを選ぶ必要がある。言葉の理解をすり合わせて、前向きな議論をしてもらいたい。
(M)