少子化が進み、地方の学校はどこも厳しい現実に直面している。児童生徒が減れば、統廃合の議論が持ち上がる。だが、学校は人数だけで価値を測るものではない。小規模校には、小規模校にしかない強みがある。新宮市の高田小中学校も、その可能性をもっと積極的に打ち出すべきではないか。
参考になるのが、兵庫県猪名川町の私立「六瀬ほしのさと小学校」。旧六瀬中学校の跡地を活用し、今年4月に開校した。子どもの主体性を尊重し、「えらぶ」「やってみる」「はなす」「つながる」「むきあう」「みとめる」の6つを教育コンセプトに、体験や対話を重視する特色ある教育を掲げ、初年度は1年生から3年生まで53人が通う。地域に開かれた学校づくりを進め、教育移住や地域活性化への期待も担う存在となっている。学校を単なる教育の場にとどめず、地域の未来を支える拠点として位置づけている点は大きな特色だ。
新宮市も手をこまねいているわけではない。2023年度から高田小中を学区に関係なく市内のどこからでも通える小規模特認校とした。小中併設や少人数教育の良さを生かす方向はすでに示されている。その特色を生かした学校づくりを進め、見学説明会の開催や通学費補助制度を設けるなど、高田には挑戦の土台がすでにある。 次に必要なのは、高田小中を地域内の受け皿として守る発想にとどめず、全国から児童生徒を募る学校へ発展させる構想。豊かな自然に囲まれた学習環境、少人数ならではのきめ細かな指導、小中併設による連続した学びは、都市部では得がたい魅力になり得る。教育方針を明確にし、移住や通学支援と組み合わせれば、学校を核に地域へ新しい人の流れを呼び込むことも不可能ではない。
もちろん、看板を掲げるだけで人は集まらない。住宅の確保、保護者への支援、受け入れ体制の整備、地域の合意形成など、課題は少なくない。それでも、児童生徒数の減少を前に現状維持を続けるだけでは、学校の未来は開けない。大切なのは縮小を前提にした議論ではなく、特色を武器に選ばれる学校へ変える発想ではないか。六瀬ほしのさと小は、学校の魅力を明確にすれば、地域の再生につなげられることを示している。高田にはポテンシャルがあり、グリーンランドを中心とした地域活性化にも期待ができる。高田小中もまた、小規模校だからこそできる教育をさらに磨き、全国に向けて門戸を開くべき。同じことが熊野川小、中にも言えよう。
新宮市では昨年から、一部の学校で授業が正常に受けられない状況があり、不安視する保護者の声も少なくない。緑丘中と城南中の統合も控え、今まさに教育現場の再編が必要な時期ではないか。市と市教委には学校運営だけでなく、学校を生かして地域の未来をつくる決断が求められている。
